カナダの赤、警報の赤
- 笠松将
- 7月2日
- 読了時間: 3分

深夜のバンクーバーを無心で歩く。歩く事はオーバーヒートした脳みそを冷却してくれる効果があると思う。僕はここ数日で一気に頭に入ってきた仕事のことなどで頭がいっぱいになっている。いつもそんな感じだから、やっぱり歩く事でそれを処理している。すれ違う人たちはカナダの国旗の赤を身に纏って、楽しそうに見える。カナダは独立記念日の前日でいつもより盛り上がっていた。陽気な音楽と、深夜なのに店の灯りで明るい街と、華やかなドレスに深夜なのにサングラスをかける人もいたりする。その一本路地を入ると浮浪者が薬物の影響なのか、自分の膝の間に顔を埋めて涎を垂らしながら何かをずっとつぶやいている。それを眺めながら少しよそ見したのかもしれない。目の前の車が急ブレーキで僕の数歩先に止まる。運転手の男が何かを叫んでいる。余所見して歩くなと注意されたのだろうと、流して僕は先に進むつもりでいた。
「男を知らないか!!!男が走って通らなかったか!!!」運転手の男は必死に僕に訴えている。十字路の車が来た方向以外の三つを確認する。一本の細い路地の暗闇の影に人影が見えた。僕はそれを指さした。日本ではほとんどお目にかかれない程大きな車の後部座席から数人の武装した男たちが降りてくる。全力で僕の指さした方向に叫びながら走っていくと同時に、車の一番高いところのライトが点灯して、ものすごい音量のサイレンが鳴り響いた。僕はその時初めて、この車がパトカーであり、会話をしていたのが警察官だと気づいた。数歩進んでしまった歩みを止めて数歩戻る。僕が数秒前に指さした路地の先で、若い男が取り押さえられている。必死に抵抗しながら叫んでいる。それを数人の身体の大きな警察官が捕まえて、路地はサイレンの赤い照明の光が回っている。照らされたり消えたり、それを繰り返している隙間に見える捕まった若い男と警察の背中に大きく書いてあるpoliceの文字に見惚れている刹那、僕の心臓が脈を打っている事に気づいた。ドクドク、血が身体中を走り回って帰ってくる感覚。通りすがりの人たちが集まってきて、中には一部始終、僕と警察のやり取りを見ていた人間もいたのだろうか。Tシャツにサンダルのオジサンが振り返って、僕に親指を立ててグッドサインをした。僕も彼に向けて親指を立てた。独立記念日に捕まる男は一体この皮肉をどう受け止めているのだろうか。
早朝目が覚めて携帯電話がなっている事を確認する。こんな時間にアラームをかけた記憶は無かったが、着信音よりも空気を揺らすバイブレーションの方がなんだか不安感を高める瞬間がある。その振動が止まり携帯電話に手を伸ばす。いくつかの仕事のオファーが届いていた。明日知れぬ身のこんな商売をしているものだから、承認欲求にまみれて潰れていく人間の気持ちも少しは理解できる。今回のオファーは中々心踊るもので、ぜひ実現に向けて動かねばと眠い目を擦った。連絡を確認していくとマネージャーからの着信であった。メッセージには、「今日撮影するシーンのセリフに大幅に変更があります」とある。なるほど。
海外では、思いもよらないことが起こるものですね!
笠松さんが無事でよかった。
それにしても、まるで小説のよう。
引き込まれました。
まるで小説を読んでるようだね!
色々気をつけてくださいね(^^)
お疲れ様😊
今更新気づいた…!
相変わらず海外生活大変そう🇨🇦ですが、無事に帰ってくること日本から祈ってるよ🙏🏻🩷
将くんの心踊るオファーもいい方向に動きますようにー!たのしみ!
いつもお疲れ様です🤝🏻
笠松さんに何もなくてよかったです。治安が比較的良いバンクーバーでも夜は別の顔があるようで…
無心に、ひたすらに、一途にお仕事をこなされている笠松さんが目に浮かびました。
どうかご無事に安全に過ごしてください🦺
笠松さん❗️ご無事で何よりでした😭
海外のお散歩は事件に遭遇する率、高いような気がしますね💦これも笠松さんが"(運を)持っている"からだと思うのですが、何事もありませんように🙏
すてきなお仕事のオファー、笠松さんが願えば絶対実現します!
気が早いかもしれませんが、どんなお仕事か、お話をきけるのが楽しみです。
大量のセリフ変更も、笠松さんなら無事に乗り切られていると思います。とはいえ、おつかれさまでした🙇♀️
ご健康を祈っております。