- 9月4日

例のドラマと例の現場

渡米と台風とで完全にノータッチだったドラマの解禁についてそろそろ触れとこうかなと思いながら、アメリカの日々が意味わからん過ぎてそれどころでは無い。しかし最終回に向けて何か書かなきゃというある種の強迫観念に迫られている。日本はこれからベッドでのすやすやタイムに入る頃だろう。羨ましい、こっちに来てずっと眠いし、ずっとお腹が空いている。

五月だっけ？六月だっけ？「七月期の連ドラに出る予定です」と伝えてから数ヶ月も経過しました。時の流れは本当に早くて驚かされます。初めてオファーをいただいたのがさらに一年前で、その時はプロデューサーからのラインにお断りの返信をしていて、そんなことすら忘れていました。独立と海外作品と諸々が重なり、何も無いはずなのに勝手にプレッシャーを感じていました。空のリュックサックを背負って、重いと勘違いしていたのだと思います。「連ドラに出るけど情報解禁はしない、探せ！この世の全てをそこに置いてきた！」とゴールドロジャーみたいな事を言い放っていた頃が懐かしいですね。

皆さんからも放送前段階から沢山の推測の連絡をいただきまして、「いや、そんな大した事じゃ無いんだけど…」と若干の焦りすらありつつも、第一話の放送が終了した時にはもう「降り積もれ」で確定されていて驚きました。流石に一話で気づく人はいないだろうと思っていましたから。撮影中は「もう少し顔が見たい、帽子を少しだけあげれないか」と少しずつ脱がされていく女性アイドルのような感じで撮られていました。監督達は角度を変えたり、カメラを下からアングルにしたり、色々と試行錯誤してくれていて、それをニタニタ意地悪な顔で見ていました。

ドラマの話数がすすんでも謎は一切明かされず、セリフすら喋らない、そんな僕の役に「みんないつまで付き合ってくれるだろう？」という気持ちが無かったわけではありません。ドラマとは関係なく、いつ愛想を尽かされるだろうと考える瞬間もあります。

現場で数人の俳優達としかご一緒できませんでしたが、みなさん素晴らしい人達で楽しかった、嬉しかった瞬間の数々を覚えています。ドラマ撮影も中盤を過ぎた頃、小日向文世さんからお褒めの言葉をいただきました。それがとても嬉しくて。ノンクレジット、顔全体覆う特殊メイク、お芝居への姿勢、迫力、などなどたくさん褒めてくれて、あの日は気持ちが良かったな～（実際芝居への姿勢は結構終わってるんだけど）

長谷川京子さんからプリンをいただいたのでちょっと大袈裟に美味しいとリアクションしたり（食べ終わったあと瓶を持って帰って家に飾りますと言ったのは流石にやり過ぎたか）、特殊メイクのなみかわさんの漢デカタオルとか、短パンからハミチンする撮影の高橋さん、各監督とはちょっとずつピリつく瞬間があったり（機嫌が悪い日もそりゃあるよ！）、刑事側の町田悠宇さんにナンパされて朝まで飲んだり、バラエティから移動してきた調子のいいAPのウラベさんを毎朝脅したり、現場では助監督ハマくんが日に日に焼けていったり、ポケ詰めで共演したハセ兄にちょい役じゃねーかっていじったら「地主の設定で細かい役作りをしている」とふざけてきたり。

撮影をしているといろんなことが起きるね。

楽しんでくれた人、これから見る人、観る気ないよって人、なんだっておっけーだよ。全部が全部見てくれなんて傲慢を言うつもりは今は無いんだ。誰よりも僕が一番に楽しんでる。誰よりも僕が満足する為に今を生きてる。現場に入る時はいつも「俺がきたぜー！つまんない毎日に嫌になってるんだろ～、見たことがない、本物の俺がきたぜー！」って言い聞かせてるんだ。冗談言ってるぜって顔で現場は笑うかもしれない。それでも自分の言葉に責任を持つ為にカメラの前で震える掌を抑えてる。