6月5日

嘘つきは俳優の始まり

照明をたいてもらい、一番いい場所から写真を撮ってもらう。その中で一番いいものを選んで世界に投稿される。加工や修正こそしていないが（そんな時間がない）普段の僕とは違うわけだ。僕が非常階段でタバコを吸いながら、その姿をスマホで撮られたものをチームで回し見して、爆笑していた。「輩じゃないですか」「キラキラモデルだから」

たくさんの人に好かれたいな～とか考えて俳優を始めたけど、今の僕はそんな単純な事ではなくて、もう少しややこしい自分との対話を繰り返している。何より一番は、「勝手に好きになられて、勝手にがっかりされる」のがツライ。本当に「うっ」となる。そう言う時、普通の人なら嫌われないように、出来るだけふ不得意なことには挑戦せず、歪な感情は隠して、綺麗な部分だけを見せようとするのかもしれない。

でも僕は違う。

隠して隠して、一番盛り上がったところで「最悪だね」と、今までのことは全部無かったことみたいに嫌われるのが一番嫌だ。もう本当に「うっっっ」となる。綺麗に隠して、梱包して、豪華にリボンなんか付けようもんなら吐き気がする。出来るだけ盛らないほうがいい。加工なんかしたら、実物に会ってがっかりされる。

だからと言ってなんでもいいわけではない。最低限の清潔感と、TPOに合わせた振る舞いやか格好は大切だと思っている。もう３１だからね。

早くバレたほうがいいんだと思う。

みんな最上級の自分史上一番に良い状態を本当の自分だと勘違いしている。パフォーマンスにしたって、なんだって、自分の一番ダメな部分が自分であると僕は思ってる。そして、その一番ダメな自分を底上げして、それでいて「君が好き、一番大切な人」と言われたいだなんて、僕は傲慢で強欲だね。

先日、女優さんと食事に行く機会があり、普通のご飯屋さんでダラダラ話していたら、一応人目についた時用にと思い、僕のキャップを彼女に被せてあげたことがあったの。優しさだよね、愛だよね。「俺のことはいい、君のことを守りたいんだ」とそういうヒーローみたいな気持ちだよね。彼女が帰り際にその帽子を僕に返しながら、「居酒屋にいるおじさんの匂いがする」と満面の笑みで答えてくれたんだ。

それはもう、普通のおじさんじゃないですか。