外の世界は怖いから
- 笠松将
- 4月9日
- 読了時間: 4分
ベランダで春の日差しをしかめっ面で眺める。下手くそな鳴き声が、換気のために少しだけ開けている窓から聞こえる。振り返るとチャメくんがこちらを見ながら、ガラスの窓に身体を擦り付けている。「お外に出たら怖い事がいっぱいだよ、チャー」と言うけど、そんなことよりも外の世界が気になるらしい。「見たいよな、怖くても、傷ついても。男だもんな、おいで」

一年半ぶりに立ったオーストラリア、シドニーの地は、撮影できた時とは全てが違うように映った。気候はいいし、人々はのんびり優しくて、飯も意外と悪いもんじゃない。景色がとにかく綺麗で、両手を太陽に伸ばして深呼吸をしたりした。久しぶりに会うジャスティン監督はおおらかで、かわいい娘と手を繋いでいた。原作者のリチャードさんは撮影の時と同様、物腰柔らかい声で。わかりやすい英語で話しかけてくれる。「ショウが参加したおかげで深みが出た」とか、そういう嬉しい言葉をたくさんかけてくれた。
戦争中の過酷な現場を共にした、ウィリアム、サム、デイヴィッド、トーマスらも再会を喜んでくれた。正直、現場ではほとんど話していない。笑顔で彼らとハグをして、何度も何度も握手をした。お互いを「最高だよ」と讃えあう時間は、それこそ最高な時間だった。主演のジェイコブは忙しい取材の合間に、わざわざ挨拶に来てくれた。覚えてくれたこと、受け入れてくれたこと、笑いながら談笑できたこと、その全てがシドニーの景色と相まって、美しいものだった。

と、とにかくキラキラした経験をしてきたと、そう言う話でこのブログを終わらせてもいいのだけど…。正直、帰りの飛行機では放心状態だった。主演のジェイコブ・エロルディくんと圧倒的な差を感じたからだ。これが、ハリウッド第一線の超人気俳優だと、本物を見てしまった。あれはあれ、僕は僕と、分けて考えられたらどれだけ楽だろう。身長2メートルほどの圧倒的スタイルに、圧倒的なスター性、芝居を始めてまだ数年という末恐ろしい才能と、何より努力家で優しい、ナイスガイだ。自分に足りなものを、こんなにも持っている人類がいるのかとがっくりした。こんな奴に勝てるわけない、と始めて思った。
「数字に向き合いたい、圧倒的な人気が必要だ、カリスマが欲しい」と、そんなことを言うと、「笠松将は人気者になりたいらしい、きゃーきゃー言われたいらしい」と音程のズレた笑い声でバカにされる事がある。何もわかっていない。彼らは何もわかっていない。全く違うステージの会話をしている。数字が必要だ、圧倒的な予算と、才能と、熱を集結させて、それでやっと、勝負できる最低ラインに立てる。そのラインに立ちたい。やりたいことを本当の意味でやるには、最低限それが必要なのだ。
「笠松くんの作品を観てもらえたら、きっと全て手に入るよ」
「その観てもらうこと、が、一番難しい事なんですよ」

オーストラリアで通訳を担当してくれたハルコさんは、娘さんがジェイコブの大ファンだそうだ。初めての俳優の通訳で、とても緊張していると話してくれた。「今回通訳させてもらうにあたり、トウキョウバイスを見ました。普段映画などは中々観れないんですけけど、すごく面白くて、佐藤さんのこと大好きです」と興奮しながら伝えてくれた。通訳の仕事のために、わざわざ作品を観てくれた彼女の姿勢に感動した。

レッドカーペット、舞台挨拶などを一通り終わらせて、パブでのパーティーに誘われた。せっかくシドニーまで来たんだ、顔を出そうと勇気を出して参加した。少しだが英語の上達を感じた。以前は挨拶しかできなかったが、五分、十分と少しだけ会話が長く出来ることに幸せを感じた。二時間くらいいただろうか?流石にしんどくなってきたので、数人に挨拶してパブを出ようとした。ジェイコブが僕に気づいて(彼はずっと誰かに囲まれていて)、声をかけてくれた。「もう行くの?話したかったよ。ショウ、写真でも撮らないか?」と彼は本当に優しい。「実は、僕の通訳の娘さんが君の大ファンなんだ。母ちゃんのメンツのために、彼女と写真を撮ってくれないか?」と言うと嫌な顔ひとつせずに、ツーショットを撮ってくれた。
帰りのタクシー、通訳のハルコさんにこれでもかと、感謝を伝えられた。「娘に始めて、自分の仕事に対して胸を張れます」と。良かった。「二日ですけど、笠松さんと過ごせて大ファンになりました。応援しています。これからも体調に気をつけて頑張ってください」と。
帰りの飛行機は、なんだかとても悔しかった。でも帰国して、一日ぐっすり寝て、筋トレをして、飯を食って、今、全然違うことを思う。いや、全然違うことはないか。

圧倒的な本物を見た。歩くだけで誰もが振り返り、次は俺と仕事をしようと大人たちが寄ってくる。若い女子どもは奇声を上げながら、なぜだか走り回っている。俺にはそんなことはできない。一人一人、哲学を擦り合わせて、一人一人、仲間を増やしていく。「どうすれば勝てるんだ…」って頭を抱えていた空の上の僕へ。一人一人、その作業を七十億回繰り返すんだ、目の前の奴らを一人一人、唸らせていくんだ。時間をかけろ、大変なのはわかっていただろう、負けるな、逃げるな、足りないものを数えるな。できる、絶対にできるから。
神様って本当に不公平!
人間の個体差大きく作りすぎ!
自分は理想のあの人にはなれないし、誰もがうらやむような突き抜けた才能もありません。圧倒的な才能の前では太刀打ちできず、なんて自分は無能なんだろうと打ちのめされることもあります。
でも、力の差を見て捻くれて卑屈になるのは凡人ですね。
圧倒的になりたい!権力が欲しい!そしたら世界は変わるのかなーって考えちゃうけど、私は私の安定感を大事にしなきゃいけない。努力しなきゃー。
笠松さん、ここにファンがいること忘れないでくださいね!若くもないし、奇声を上げたり走り回ったりしないけどファンですからね!笠松将ファン仲間増やしたくて、写真集はしっかり布教用も購入しました✌️SNSでも笠松さんのことたくさんシェアしてコメントもして布教していきたいです🔥私は私の出来ることを!これからも応援してます😊
集合写真のジェイコブデカ過ぎてびっくりした
おかえりなさい。
華やかな世界は、いかがでしたか?
忘れないでください将さんもその世界の壇上に立っているんですよ✨
凄い事です👏誇らしいです😊
数年後、ハリウッド俳優の日本人。
帝国ホテルでトークランチショー(お一人3万円200席sold out )で海外ロケの苦労話を語る
将さんの姿が想像出来ます💕楽しみ🥹
うまく言葉にできないけど、ブログ読んでみんなのコメントも読んで、ほんとにここがあってよかった!て思う!一瞬去年しんどかった頃を思い出したけど、全然違う今に感動してるよ🥺
ほんとにただ、あとは見てもらうことだけ!見守るだけじゃなく私も力になりたい💪
「実は、僕の通訳の娘さんが君の大ファンなんだ。母ちゃんのメンツのために、彼女と写真を撮ってくれないか?」と言える笠松さん凄いです。いつもブログを読む度に笠松さんには人間らしい感度の高い脈打つ心があるって感じます。陰ながら応援しています。