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恋愛は映画の撮影後に



「映画撮影の全体リーディングで、ロクにセリフも覚えず噛み噛みの男がいる。『あれじゃダメだね。海外から来た俳優だか何だか知らないけど、もし俺がその立場なら台詞を暗記して、パフォーマンス込みで完璧にこなすけどね。スタッフや共演者に知らしめるんだよ、我ここにアリってね。それなのに一発目の会合であんな格好悪い姿を見せるなんて…。海外の俳優ってのもたいしたことないね(笑)。俺ならそんな事しない。芝居ってそんなに甘くないんだよ?』と、僕は彼に思う。」




SBSの生放送を終えて、深夜に腹が減った僕は付き添いに来てもらったグッドニュースの代表プロデューサーのハンさんと深夜のあけおめ食事会をした。カンジャンケジャンとヤンニョンセウがとにかく上手くて、疲れは一瞬で吹き飛んだ…とはいかず、翌日は泥のように眠り、1月2日の映画チームとの打ち合わせに向かった。当日は衣装、メイクを主演女優さんと並んでの最終確認をする。そしてその後、全体のリーディング、そして「コサ」という韓国のクランクイン前のお祓いを行う予定だった。眠い目と重たい体に鞭を打って、ホテルの部屋を後にした。メイクルームは既に活気があり、話題は「SBS演技大賞」で持ちきりだった。女優さんが「カカオトークはインストールしてくれましたか?」と言うので、「勿論です」と答えて、行事後の食事会で交換することを約束する。



リーディングが始まり、本格的な会場に少し緊張する。準備はしてきた。韓国語だが問題は無いはずだ。台本のト書きが読まれ、俳優たちがセリフを読んでいく。待て待て待て、今どこだ?早すぎる…。二行ほどのセリフが一息で言われていく。全くついて行けない。台本を目で必死に追っていると、隣の通訳ゴヌさん(グッドニュースでもお世話になった)が僕の肩を叩く、「ショウさんのセリフです」と。頭が真っ白になり、顔は真っ赤になる。簡単な一言のセリフを噛んでしまったり、長いセリフに関しては小学生の発表会…いや、それよりも酷い。女優さんとの会話シーンは、全くシーンを想像させる事もできず、「一生懸命韓国語を読む日本の俳優」でしか無く。芝居の「し」の字も感じさせられる事が出来ず、リーディングは終了する。不甲斐ない。僕は空を見る事も出来ず、ましてや監督はプロデューサーの方なんて怖くて見れない。ベテランの俳優さんたちが優しく、僕に聞こえるように「海外から来て、韓国語のセリフは大変だよな〜」と大袈裟に会話をしてくれている。


僕は外に出る。マイナス10度の韓国の気温が僕の熱くなった頭を一気に冷ます。タバコに火をつけて猛省する。どこか舐めていたのかも知れない。浮き足だっていたのかも。本気でやらないと振るい落とされる。必死にやって、それでも切り捨てられる世界だってわかってたつもりだったけど…。甘かったね。



コサという行事が始まる。韓国の皆さんは慣れているようで、少しの緊張感はあるがリラックスしている。代表のハンさんが前に出て、意気込みを簡単に話す。そして蝋燭に火を灯し、線香三本にその日を移す。火がスッと消えて煙が上に昇っていく。大きく土下座?のようなことを三回して、次は監督へ。そして僕と女優さんの番が来る。助けてもらいながら、どうにか自分の席に返ってくる。こういう事をチームの全員がやり、意気込みを宣言していく。最後にハンさんが前に出て、劇場公開の映画の難しさとか、それでもやりたい理由だとか、監督との出会いとか、女優さんと僕を選んだ理由だとか、そんな事を話す。話終わって大きな拍手が鳴り響いて、監督のハンさんが抱き合っていた。グッと来たけど、僕は正直、何だか溶け込めずにいる。ホテルから食事会に移動する途中、監督とハンさんが声を掛けてくれた。


万能感のようなものがありました。カメラの前で出来ないことはないという自信、過信がありました。言語も文化も撮影方法も違う韓国の映画なのに準備が甘かった。しかし撮影までまだ時間があり、こんな感覚になれて良かったと感じています。僕は恥をかきましたが、やる気を買いました。監督を不安にさせてしまいすみません。一生懸命頑張ります。


食事会では皆んなで楽しく食事をした。女優さんが「カカオは?」と声を掛けてくれたので助かった。こういう時、改めて自分から連絡先を聞くのですら気が引ける てしまう。カカオトークを開いてQRを読み込んで僕のカカオに彼女のアカウントだけが友達登録される。「何かメッセージを送ってください」と言うので送る。ん?エラーが出る。あなたのSIMは認証されませんとかそんなメッセージで文章が送れない。すぐに女優さんがラインをインストールしてくれて(じゃあ最初からそうしてよ…と少しだけ思ったが)、女優さんのラインに僕だけが友達として登録される。無事にメッセージの送受信ができる事を確認した。失礼の無いようにします、ありがとうございます。


ハンさんが僕を見て、「ショウさん、恋愛しに来たんじゃないよ?」と笑う。僕は立ち上がり高らかに宣言する。「僕は映画を作るためにここに来たんです!!!恋愛は撮影が終わってから、いや終わりかけにするかも知れませんが!!!」と。テーブルのみんなは笑ったけど、一番伝えたかった事が一行目だと、監督とハンさんには伝わった気がする。目の奥がゆっくり、でも確かに燃えているような気がしたから。






 
 
 

101件のコメント


혜미
혜미
3時間前

우리쇼가 왜이리 귀여워 ㅜ

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haroldbonii
haroldbonii
1月11日

ㅋㅋㅋ귀여워

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笠松さんが観たくて「グッドニュース」拝見しました!

機内で赤軍の旗の前で受話器を片手に話すシーンかっこよかったです。

憧れだったという韓国作品にメインキャストで出演され、

更に母国語ではない韓国の作品にチャレンジされる

その心意気がまず尊敬でしかないです。

どうなるか分からなくてプールをただ見ている人より、

どうなるか分からないけどプールに飛び込む人がカッコいいです✨

いつもそんな姿を私達に見せて下さってありがとうございます✨

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高野豆腐
高野豆腐
1月07日

かっこいい!

ふがいない僕、せめて空を見る瞬間はありますように🌈

編集済み
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yakko
yakko
1月07日

ミスしたり、恥をかいたり、ピンチに陥ったりしても、それをちゃんと燃料にして また走り出せる。遠まわりが嫌でナビに頼りたくなるけど、結局アナログな感覚が良かったりする。

人と人だから。熱意や意気込みは伝わってるよね。

2026年も新しい作品、楽しみにしてます!

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