top of page
SKOCロゴ

未来の話をしようぜ

時差ぼけで朝四時に目が覚めた。同じ地球で生きているのに、場所によって時間も違う、話している言葉や文化も違う。なんだか不思議だよなって、そんなことを考えていた。真っ赤に日焼けした肌は、笑うと少し痛くて、メイクさんに申し訳なく思う。お昼にNHKのスタジオに入ってから、衣装を選びながら、メイクをしながら、家族の到着を待っていた。NHKの人気番組「土スタ」に、家族が観覧にくるのである。久しぶりに会った「事件はその周りで起きている」のプロデューサーたちも元気そうでなによりであった。



 

母から、「新幹線に乗りました」とか「アイスクリームを食べています」とか、名古屋からの道中ズッコケ速報が送られてくる。「NHKに到着しました」の連絡が届くより先に、マネージャーが入り口に向かった。名古屋からの御一行は騒がしくて、控え室で準備をしている僕にも、到着したことがすぐにわかった。大きな紙袋を四つ抱えた母が、現場のプロデューサー達に挨拶しながら差し入れを渡している。この時改めて、家族の観覧を快諾してくださったNHKチームに感謝の気持ちでいっぱいになった。祖父、祖母、叔母、母のために楽屋まで用意してくれていた。




 

生放送の準備をしていると、「大雨のため生放送ではなくなります」というお知らせが届く。この時、大雨で大変な被災地の映像を見ながら、自分の仕事はあまりに脆く、何をすることもできない仕事だな〜となんだかそんな気持ちになる。生放送を楽しみに、そのために予定を空けたり、録画予約をしたり、楽しみにしてくれている人達にも申し訳なくなる。土スタは生放送ではなく)収録になり、どんなテンションで入ればいいのかわからなくなってしまった。偶然、事件は〜の西川監督が挨拶に来てくれて、そんな僕に対して「見てくれた人たちに元気を届けてください。目一杯楽しんでください」と背中を押してくれた。そうだよな、結局、それしかないよね。

 

収録時間がやってきてスタジオに入ると、レギュラーのメンバーが打ち合わせをしていた。大きな声で挨拶をした(みんなにパワー!パワーだ!)。木村昴さんが僕の作品をたくさん拝見してくれていると言ってくれた(本当かどうかはわからないけど、そう言ってくれるのが嬉しい)。佐々木アナが同い年だという会話の糸口をくれて、それで盛り上がった。僕が「今日家族が観覧に来ているのでご迷惑おかけします」と話すと、近藤はるな(ハリセンボン)さんが、「よかったらお写真でも撮りませんか?記念に」と提案してくださった。御一行は少し遠慮して変な間が開きそうになった時、祖母が踊りながら前に出てきて「撮ります〜」というのでみんなが笑ってくれた。どこで撮るのがいいとか、照明調整しますね、と、各技術パートの皆さんも協力してくださって、撮影前からもう、心がいっぱいになった。祖父母は満足そうにモニター前に用意された椅子に戻って行った。絶対にこの収録で恩返しをしなければいけない。クールなかっこいい俳優像なんて捨てちまえ。「パワーだ、パワーを届けなきゃいけない」とぶつぶつ。なんだかものすごいプレッシャーを感じながら、本番までのカウントダウンが始まった。




 

収録が無事に終わると(収録中のことはもう必死すぎて覚えていない)、番組のスタッフが(裁判の終わった後の勝訴!みたいに)走ってきて、「放送時間が決まりました!!!9月23日、10:05からです〜!!!」とアナウンスしていた。なぜかそれを聞いている列の最前線にいた祖父が、「それは悪い時間じゃないよな〜」とか言って、出資者くらいの感じで受け答えしていた。(恥ずかしいからもう控え室戻るよっ)




 

その後、帰り支度をするとプロデューサーたちと祖父母が会話をしていた。祖父が「これからもよろしくお願いします、ドラマでもなんでも」と話している声が聞こえたので、孫の為にこうやって挨拶してくれているんだな〜とグッときた。近くで聞いていると、「俺は名古屋で暇なもんだから、ドラマに出たいから〜」とまさか自分の売り込みをしていた。マジで飲んでいたお茶を吹き出しそうになった。

 

御一行をタクシーに詰め込んで、銀座の寿司屋に向かう。弟も合流してきて、マネージャーも連れて行く。店に入ると祖父が「ちょうど七席だがや」と言い、祖母が「ピッタリ〜」と手を叩いて喜んでいた(貸切だからそのように調整してくれているんだよ)。一つ一つを喜んで食べてくれて、食事会は終始大爆笑だった。祖母はコースを完食して、日本酒を三杯のみ、なんだか幸せそうだった。




 

もう結構な年齢の祖父母は体もしんどいらしく、地元名古屋では「俺はもう死ぬから〜」なんていう話をする(その度にこういう人はなんかすごい長生きしそうだな〜とも思うが)。そんな二人が、「次はいつ、またご飯に連れて行ってくれるんだ」とせがむ。僕が子供の頃に遊びに連れて行ってもらっては、解散の度にそうしたように。「楽しいな〜、幸せだな」と。




 

タクシーに乗せ、名古屋へ帰らせる。またこんな楽しいことを提供できることができるだろうか?とスッと思う。仕事を頑張らなきゃ、挑戦を止めなければ、また必ず、すぐに実現するはずだと。「またすぐにやろう、集まろう」と告げてタクシーに手を振った。


70件のコメント

最新記事

すべて表示

70 Comments


べー
べー
Sep 23

笠松家、NHKの方々、レギュラー御三方、登場人物がみんな優しすぎて読みながらウルウルしてしまいました。


Like

ほんとに家族思いな子を持って皆さん嬉しいでしょうね🥰

 忙しいでしょうに自分以外に気を配れる将君はやっぱり好きだなあ❤️

番組拝見して楽しかった〜🥰

ドラマも録画セットしたし楽しみにしてます。👍

Like

シャノ
シャノ
Sep 22

土曜日仕事から帰宅して直ぐに録画見ようと思ったら録画できてなくて…めちゃくちゃショックで暫く凹んでて…なんでやろうって配信調べてたら大変な事になってたんだと把握しました…生放送ではなく残念でしたが…今日、楽しみです!

それにしても笠松家はあたたかい✨ご家族がチャーミングで楽しいし ほっこりしました☺️

Like

私も今日、施設に入っている祖母に母と一緒に会ってきました。

17年前に祖父が亡くなり、

ずっと一人暮らしをしていた祖母が

認知症になり、母がたまに家に行って暮らしを手伝ったりしていましたが、

手に負えなくなってしまって施設に入りました。それがもう5年前とかです。

今はもう、認知症も通り過ぎて

基本ずっと目を閉じていて(息はもちろんしています!)、

食事は流動食を流すだけ。(それでも点滴にならずにどうにか口から接種しているだけ、まだ生きていることを実感できるようです)

節々は硬直して、手指は赤ちゃんのようにギュッっと固くずっと握った状態。

そんな起きているかどうか分からない祖母を囲んで、母と昔話をしてきました。

人間、老いなくなったら良いのになって思ってしまいます。

成長はしたいけど、老いがなくなったら良いのに。

もう一緒に会話が出来なくなった祖母に、私は何ができるだろうと

将くんのブログを読みながら泣いてしまいました。


Like

みかん
みかん
Sep 22

おじいちゃんおばあちゃんがおちゃめすぎる☺️❤️ほほえましい❤️

愛されてますねぇ☺️しょーちもめちゃくちゃ孝行してますねぇ☺️

写真もたくさん共有してくださりありがとうございますぅ☺️

癒されるぅぅ〜☺️

Like
bottom of page