熱くなったもん勝ち

海外での撮影、というかどこで撮影するかに問わず海外作品は、あまりにも時間があり（忙しすぎても大変なのだけど）それとは別にしっかりと休日もあり、僕の全てのスイッチはほぼオフになりかけていた。不完全燃焼で寝付けず、かといって積極的な行動も取れず、食っては寝てジムにも行かない、そんな数日を送っていたんです。カナダ時間、昨夜夕方、マネージャーから英語でのインタビューが入ると連絡をもらったんだけど、できるわけ無いだろ、と一蹴して日本語で答える気満々だったんです。今朝、目が覚めるまでは。

閉め忘れたカーテンのせいで目が覚めて、撮影の無い土日に予定も意欲もない僕と鏡の前でにらめっこをするんです。どうする？何する？また寝る？もう寝れないよ。英語の勉強は？面倒臭いよ、どうせ完璧には出来ないし。暇じゃない？暇だよ、じゃあどうするの？わかったよ、じゃあはジムくらいは行こうかな。うん、それがいいと思うよ。僕は何日もサボっていたジムに向かいました。早朝なのに汗を流すムキムキおじさんがベンチプレス、ギャルの二人組がスクワットをしています。眠そうな顔でジムに来て、今にも帰りたそうな僕はとにかく重りを足していきます。体が少しずつ熱くなってきます。久しぶりに汗をかいた気がしました。いつも上がるはずの重量がやけにキツくて焦ります。普段より回数もあがりませんでした。

ジムの後は、体がポカポカして、なんだかやる気が出てきました。英語のインタビューの質問案を事前に貰っていたので、しっかり読み込んで英語でのカンニングペーパーを作りました。難しい言葉は使わずにできるだけシンプルに。できるかな、うまくやれるかな。

ベランダでタバコを吸いながら、換気扇の後ろの鳩ぽっぽが居ないことに気づきました。あんなに怖がっていたのに、ちゃんと彼は羽ばたいて行きました。やりもせずに、準備もせずに逃げようとしていた自分が恥ずかしくなります。出来ないかもしれない、失敗するかもしれない、文法がめちゃくちゃで伝わらないかもしれない、発音が下手で笑う人がいるかもしれない、準備をしても途中から日本語になるかもしれない。いいじゃない、やることに価値があるじゃない。きっとそうだ、そうじゃなきゃこの世界はあまりにつまらなすぎる。

もうお米を毎朝持っていく必要もないね。お水を変える必要もないね。毎朝、生存確認をする必要がないね。よかったよかった、手間が減ってよかった。でも少しだけ、なんだか寂しいね。

https://youtu.be/hGgKM4lJHDE?si=GNkdk3sGrieqr91g