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神様から試される瞬間




バーで一人、本を読んでいると奥の方から「そんなことを言えるのは青いからだ、恥ずかしい」なんていう声が聞こえてきた。読んでいた本をそっと置いて、この数週間の自分の考えを振り返る。青いね。それでもいいじゃない。こんなにも現実をずっと、ずっと見つめているのだから、たまにはファンタジーに焦がれても、それもそれでいいんじゃないかな。



オーストラリアのプレミアイベントの招集がかかった。あれから少し時間が経って(素晴らしい作品に圧倒された事もあり)、なんだか自分がその作品の代表ですと偉そうにそれに参加するのがしんどくなっていた。捕虜役を演じた彼らは、俳優の領域を超えていたし、英語が流暢に話せるわけでもなく。さらにはやはりアウェイのオーストラリアに一人で向かうのも、少しずつ億劫に感じていた。


そんな時、とある大きなお仕事のオファーをいただく。これはヨーロッパに行って、華やかで、正直お仕事としてのギャラもいい(生々しいけど現実はそういうのも大事なんだよ)。こちらはパッと言って、やることをやればいい。輪に入れないとか、そんなことを気にする必要はない。一言の英語で揚げ足を取られる可能性もほとんどない。


この二つのスケジュールが、ピッタリかぶるのである。どちらかにいけば、どちらかにいけない。


僕は自分のことを、「リアリスト」だと思う。ロマンだとか、ファンタジーなんてどうでもいい。そんなことよりやらなければならない事をやって、現実に向き合う必要がある、って。僕はどちらを選ぶんだろう。「週末までに返事をください」と言われて、週末が過ぎて数日が経過した。選べないのである。オーストラリアに行かずに後ろ指を刺されそうな気がする。ヨーロッパを断ればこんなチャンスもうないかもしれない。選択って、本当に面倒臭いよね。ふて寝して、考えるのをやめた。


次の日は、10:30から英語があった。なんか、特に理由はないんだけどだるくて、いつものアラームはセットせずに寝た。「寝坊してしまったのだからしょうがない」を数時間後の自分に用意して、電気を消した。


アラームも鳴らない、マネージャーからの電話も来ない、そんな朝。ウニが僕の顔の周りを走り回っている。「起きないと始まっちゃうよ」って。「もう少し寝てたいんだよ」「でも後悔するよ、絶対」。「確かにそうだね」、僕は起き上がりコーヒーを入れた。ウニサメのご飯と水、トイレを掃除して、何日も放置した洗濯機を回した。一時間の英会話を終えて、ベランダから空を見た。この方角が、一体どちらに向かっているのかわからないけど。僕は「オーストラリアに行く事を決めた」。


マネージャーにそれを伝えると、とても喜んでいた。流石です!って。食っていけなくなったら、解散だからね。


原田くんに連絡した。

「俺は結構、ロマンチストなのかもしれない」


「お前はロマンチストだよ」


 
 

64 Comments


👏🏻👏🏻👏🏻✨カッコイイ!

さすがしょーちゃん!漢!!!

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♥100回くらい押したかった。

そんな選択👏

どうやら私もロマンチストのようです

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うん、それがいい。

そーしてくれて嬉しいよ☺️✨

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つきこ
つきこ
Feb 26

いつも小説読んでるみたいな気持ちになれるブログです。笠松さんエッセイか何か書いて欲しいです(笑)

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絵里
絵里
Feb 26

難しい選択でしたね。でも笠松さんが選んだ行き先はどんな形であれ正解だと思います。どんな選択でも笠松さんの選択を応援したいです

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