釜山国際映画祭①

ショーも釜山へ来い。トロントでの最終日、グッドニュース主演のソルギョングさんから言われた。スケジュールのこともあり、すぐに諸々を調整した。行けたとしても開幕式には参加できないと彼に伝えると、俺も開幕式には行かないと言われた。そこからはもうバタバタで、最終的に釜山行きのチケット、宿泊するホテルを確定させたのが渡韓の数日前であった。となると衣装やメイクといった問題にぶち当たる。もう時間がない。さらにそういう事に割ける脳みその容量は残っていない。覚えなきゃいけないセリフ、読まなければいけない台本、確認をしなければいけない写真や文章、そういうものに睨まれながら叫びたくなる気持ちを押し殺している。それでも釜山に行かなければならない。衣装はワコマリアさんが快く貸してくれて、メイクはなんか顔に塗るやつを持っていく事にした。かなり適当である。

この日が

釜山に到着してすぐ、送迎の車がプレートを掲げて待機してくれていた。どのくらいかかりますか？と尋ねると一時間ちょっとだと言われたが、最終的に車に三時間近く乗っていた。かもられた訳ではなく、純粋に道を何度か間違えてしまったらしい（何度か？）。飛行機に乗っているよりも長い時間を運転手と過ごした。ホテルに到着してすぐにご飯に呼んでもらったが、少しゆっくりしたくて後から合流すると伝えた。今作の代表のハンさんが気を遣ってくれて、別行動でご飯に誘ってくれたのでそちらで食事を済ます事にする。高級な焼肉屋さんに入り、韓国映画と日本映画の現状などを語り合っていた。ハンさんは日本語が達者なのである。生意気なことも散々言い合い、盛り上がったタイミングで「笠松くん！！！」と声をかけられた。え？釜山の焼肉屋さんで？日本語で声をかけられる？誰だ、誰なんだ？恐る恐る振り返り、僕はすぐに立ち上がり挨拶に向かう。「柳楽さん、お久しぶりです！！！！！」と深々と。少し立ち話をしているとハンさんが気を効かして、せっかくなので二人の写真を撮りませんか？と提案してくれた。柳楽さんが爽やかな笑顔で「写真ごめんなさい」と即答して僕は大爆笑した。彼のこういう所も大好きなのである。

そして映画チームに合流し、みなさんに挨拶をして、深夜一時前に解散した。「明日もあるから」と監督が言っていたが、そういう感覚がこの人にあるのかと驚いた。その後は、ガンニバルでも共演した米本さんからご連絡をいただいた。日本の俳優や監督が集まって飲んでいるから来ないかと。せっかく釜山まで来たのになんでわざわざと、正直頭をよぎったが逆にせっかく釜山で会えるのだから、そちらに参加させてもらった。大した面白いことはなかったので、タバコを吸うと言って誰にも挨拶をせずに帰った。こういうこともある。

昼ごろ、米本さんとゆっくり話したかったので喫茶店に行く事にした。近況報告ができて良かったし、米本さんの素直で優しい人柄に触れて心が浄化された気がする。すぐに準備をして諸々のイベントを済ませて、その日の夜の打ち上げ？飲み会？むしろこっちが本番か？を迎える事になる。僕には行かなければならない場所があった。俳優のカンドンウォンさんから「パティーをするから遊びにおいで」と連絡をもらっていたのである。お店の外には五百人くらいのギャラリーが集まっていて、その真ん中に彼がいた。僕に気づくとすぐに近づいてくれて、僕の手を繋いでくれて、そのまま店の中に誘導してみんなに紹介してくれた。業界の大物たちがゴロゴロといたのだと思う。乾杯をして、挨拶をして、とっても良い再会の時間だった。カンドンウォンさんは今日もとにかく優しかった。その後は、ハンさんと米本さんと喫茶店でケーキを食べた、ハンさんと米本さんが繋がればいいな〜とも思ったし、

とにかくストレスと寝不足とで甘いものが食べたかった。仕事の話を熱心に話し人盛り上がりあり、携帯を見ると山田孝之さんから何度も連絡があって…。「早く来なさい」と。これは嫌な予感がする。「旬くんもあなたを待っているよ」と。いや僕、面識ないんですよ…。「良いから早く来なさい」と。嫌な予感がする。嫌な予感しかしない。

https://youtu.be/o1GpxLCBD3Q?si=alJXf30GegdguDLE