うざいほどの存在感②

とある作品のインタビューを確認しながら(十月に見れるとおもう)、取材の日のことを、更には撮影の毎日のことを思い出しています。何が正しくて、何が間違っていて、そんな事を考えている間は少しだけ穏やかに、それでいて優しくなれる様な気がしています。どんな言葉を使えば理解してもらえるんだろう、そもそも理解されることなんて永久にないんじゃないか、ってね。それでも伝えなくちゃいけない事があって、表現したい世界観に僕が求められるのなら、もうそれは頭で考えるだけじゃなくて、現場で俳優たちと監督と各部署のプロフェッショナルと、一度目を合わせて、膝を突き合わせて、芝居してみなくちゃいけない。それでも尚、分からないことはある。何ならより深まっていく。眉毛近くの筋肉を硬直させて、皺をたくさん作って、それから何日何ヶ月が経過して、忘れた頃にやっと、「あ、あの人が言っていた事ってこう言うことだったのか。画に写っていない汗とか涙とか血とか、そういうものが滲んでフィルターとなって作品を豊かにすることもあるんだな」って気づくことがあります。そのタイミングが今で、やってよかった、やらせてもらって良かったと心から思うんです。時間がかかりますね、本当に大切なものというのは。

先日、Youtubeを見ていたら水色の長袖シャツを着た芸人さんが、「俳優は与えられたセリフを喋っているだけなのだから難しい顔をするな」と仰っていました。その通りだな、と思う反面、そうなるとこの世界のすべての人がそうなのではないかと思ってしまったのです。このストレートヘアの芸人さんも、与えられた場所で、与えられた時間内で、当てられた照明と向けられたマイク、用意されたセットに進行台本、その上で踊っている。みんな同じで、それなのに僕は傷ついたり、深く落ち込んだりとしてしまう。そんな必要は無いんじゃないか、と。もっと切り離して考えて行きたいですね、どうしたら良いんでしょうか、永野さん。

前のブログでも書いた通り、GOODNEWSの情報が解禁されました。全編韓国で撮影された韓国の作品となります。撮影の空いた時間は何度も山田孝之さんと喫茶店でお茶をしました。何度も何度も様々な角度から、多種多様なお話をさせて頂きました。僕の俳優の仲間たちに、寒空の下、「タイムリミットを決めた方がいいと思う」なんて言い放ったのも彼です。あなたは10代から朝ドラやって、連ドラ主演して、映画でも舞台でも全部成功させてきたからであって…と言おうとしたけど、山田さんの目は本気で一才の迷いがなくて、「あ、だかたこの人は頂点に君臨しているんだ、だから僕はこの人が好きなんだ」と思いました。そんなことわざわざ言いたくないじゃないですか。聞き心地のいい耳触りのいい言葉で、その場をやり過ごすこともできたはずなのに…。優しいな〜って、これがトップオブトップかって。こんないい俳優と僕の仲間を会わせられることが出来て本当に良かったなって。

予告には（まだ情報解禁前だけど）、そのうちの三人も映っていて僕は本当に嬉しくて。

「ショウさん、このシーン何ですけど、こんな風にやってみます」とか、

「ショウくん、俺こんなことしてもいいですか」とか、採用されなかったものも沢山あるけど、採用されたものも沢山あって、それが予告編に乗っかるなんて本当にすごいことなんですよ。海外作品をやる時には、「ポスターに載せる」とか「予告に載せる」とかそういうもの全部契約なんです。でも彼らはいいパフォーマンスをしたから予告に載ったんです。勿論、予告に載っていないからいいパフォーマンスじゃないなんて事はありませんが。とにかく、あの日、情報解禁より先に予告編が上がって、それを確認した時に僕は本当に嬉しくて。頑張って良かったなって、何度も何度もトライして本当に良かったなって、腐りそうな瞬間も何度もあったけどそれを乗り越えて良かったって、思ったんです。

一つの作品で人生が変わるなんて、そんなシンデレラみたいな物語は現実には中々起こりません。この作品が公開しても、変わらず僕らの日常は続きます。それでも必死にもがいて、トライし続けた奴らがいるという事と、それを認めて受け入れてくれた監督、プロデューサーたちがいるって事、そんな事がすごく幸せなんです。作品の世界観とは全く関係ありませんが、僕たちには僕たちのドラマがあるから。それをぎゅっと大切に握りしめながら、一緒に公開を待てればと思います。情報解禁っていいですね、何だかお祭りみたい。お祭りは苦手なんですが。さて、次の情報解禁はいつだろうか。

https://youtu.be/hcN-5hoeG5U?si=gLhT6KnII92ryPWU